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事業の内容

オプティカル事業

当事業では、物質科学だけでなく、広く創薬や医療技術の基礎研究に取り組んでいる兵庫県の大型放射光施設「SPring-8」やX線自由電子レーザー施設「SACLA」等、国内外の先端的放射光施設やX線自由電子レーザー施設等で使われる反射表面の形状精度が1ナノメートル(10億分の1メートル、以下nmと表記。)以下の超高精度のX線ナノ集光ミラー等をユーザーに合わせて設計し、製造・販売しております。
本ミラーは放射光X線をnmスケールまで絞ることが可能で、それにより分析精度の向上、測定時間の短縮や極微小領域の分析等を実現し、放射光の優れた特性を発揮させることが可能になります。

(a)放射光施設及びX線自由電子レーザー施設向けX線ナノ集光ミラーの技術的背景

「SPring-8」や「SACLA」で利用されている放射光は、電子銃から放出した電子を光とほぼ等しい速度まで加速した後に、磁力によってその電子の進行方向を曲げたときに発生し、赤外線、可視光線、紫外線、軟X線(波長が比較的長い、薄い空気層でも吸収されるような透過力の弱いX線)、硬X線(エネルギーが高く透過力の強いX線)等の色々な種類の光で構成されております。この放射光に含まれているX線は、大学の研究室や病院のレントゲン室などにある検査装置等で発生するX線と比べ、10億倍以上明るく、X線の発生方法の違いにより発散せずに遠方まで進む特性を有するなど優れた性質を有し、例えば物質の種類や構造、性質を詳しく分析することができ、物質科学、生命科学、医学など様々な分野で幅広く利用され、産業技術の発展に貢献しております。
従来、放射光施設などにおいて硬X線集光を行うためには、ゾーンプレート<注3>を用いた光学系<注4>では集光強度、集光径<注5>に限界があり、後に普及したKB型光学ミラー<注6>でも、研削技術がネックとなり、研究者が期待する精度のミラーを製作することが不可能でありましたが、平成17年に大阪大学で開発された2つの超平坦化基盤技術により、「SPring-8」の理化学研究所・播磨研究所と、ナノメートルオーダー<注7>の非球面形状精度と表面粗さを両立したKB型光学ミラーを共同研究し、世界で初めて硬X線を回折限界<注8>まで集光(最小集光径36nm×48nm)することに成功しました。
その2つの超平坦化基盤技術とは、原子レベルで平坦な完全表面(任意形状でありながら、高い形状精度を持つ、原子レベルで平坦な表面であり、表面層にも原子配列の乱れが全く無い表面)を実現するナノ加工技術EEM(Elastic Emission Machining)と表面形状をナノメートル精度で計測可能なナノ計測技術RADSI(Relative Angle Determinable Stitching Interferometry)及びMSI(Micro Stitching Interferometry)といい、この技術によって開発したミラーは、“KB Nanofocus mirror”として従来にない性能を有し、国内外の研究者から商品化が望まれておりました。
そこで当社ではこのKB型光学ミラー(以下「X線ナノ集光ミラー」という。)を、大阪大学のナノ加工技術EEMとナノ計測技術RADSI及びMSIをもとに、当社が創業時から培ってきた機器開発の技術を用いてこれらミラー製造に関わる各種の自動化装置を開発し、実用化に成功いたしました。
平成18年からは本技術により製作したミラーを“OsakaMirror”(平成21年商標登録済)と名付け販売を開始し、世界の先端的な放射光施設やX線自由電子レーザー施設の研究者から評価を得て、数多くの研究施設に納入しております。

(b)ナノ加工技術EEM(Elastic Emission Machining)について

EEMは大阪大学森勇藏名誉教授らによって研究開発されたナノ加工法であり、従来の研磨や研削とは全く異なる加工技術で、化学反応を利用した加工法であります。このEEMによる加工で、加工物と反応性のある微細粉末粒子を超純水の流れによって加工物表面に供給し、このとき加工物表面との間で化学反応が生じ、引き続き超純水の流れから受ける抵抗によって、粉末粒子が加工物表面から取り除かれる際、加工物表面の原子が粉末粒子によって持ち去られることにより加工が進みます。またこの加工法は初期の材料表面に存在するマイクロメートル単位以下の凹凸の凸部だけを選択的に研磨することを特徴としており、最終的には凹凸の高さは1nm以下(原子数個分)となり、現在世界で最も凹凸の無い面を作り出すことに成功した加工法であり、原子レベルで平坦な表面を作製することができます。(図1参照)
また、通常の一般的に行われている表面加工技術であるエッチングやCMP(Chemical Mechanical Polishing)は薬品を用いますが、EEMは薬品を用いないため、環境にやさしい加工技術といえます。

図1.EEM原理

下の写真はシリコンウェーハの表面をEEMしたときの加工表面をSTM(走査型トンネル顕微鏡)で観察したもので、理想平面に対してのPV値(最大-最小値)が2.4nm(図2.(a))から0.5nm(図2.(b))まで改善されています。また原子層ごとに色分けをした結果、95%が3原子層で構成される、世界トップクラスの平坦な加工であることが実証されています。図2.(c)はEEM加工後の面で、各輝点は原子1つに対応しており、機械的歪み(物体が引張り・圧縮・せん断等の外力によって物体の変形状態を表す尺度で、物体の基準(初期)状態の単位長さあたりに物体内の物質点がどれだけ変位するかを示す。)が一切なく原子配列を乱さず40×40nmの95%が3原子層で構成されている、世界トップクラスで平坦な加工法であることを実証しています(「Hard X-ray Diffraction-Limited Nanofocusing with Kirkpatrick-Baez Mirrors」Hidekazu Mimura, Satoshi Matsuyama, Hirokazu Yumoto, Hideki Hara, Kazuya Yamamura, Yasuhisa Sano, Masufumi Shibahara, Katsuyoshi Endo, Yuzo Mori, Yoshinori Nishino, Kenji Tamasaku, Makina Yabashi, Tetsuya Ishikawa, Kazuto Yamauchi /Japanese Journal of Applied Physics Vol.44,No.18,2005,pp.L539-L542)。

図2.STMによるEEM表面の観察

当社では本EEM技術の基本特許に関する特許実施権を取得しており、また関連特許は全て自社で保有し、更に各種EEM加工装置は全て内製化しており、競合メーカーとの差別化を図っております。

(c)ナノ計測技術RADSI(Relative Angle Determinable Stitching Interferometer)及びMSI(Microstitching Interferometer)

大阪大学山内和人教授らによって研究開発された表面形状ナノ計測法であります。このMSIとはマイケルソン型位相シフト干渉計<注9>で微小領域を計測することで表面粗さ(高周波成分。表面粗さとなるエラーは高周波として捉えられ、反射率に影響する。)を評価し、スティッチング機構(ステージを移動)により、大面積をナノ形状計測する技術です。
ただしMSIだけでは本ミラーのような非球面形状ではステージの機構に起因する誤差により、大きなうねり(低周波成分。ミラーの形状のエラーは低周波として捉えられ、集光率に影響する。)を計測することは不可能です。
そこでフィゾー型干渉計<注10>に独自のスティチング機構(連続した測定表面を計測する仕組み。)を開発し、測定表面を徐々に傾けて取得した各計測データをつなぎ合わせることにより形状データを算出する本計測技術RADSIを開発し、非球面形状でも低周波成分の形状計測をすることを可能にしました。(図3参照)
その結果、それぞれの計測データ(MSIの高周波成分とRADSIの低周波成分)を組合せ、非球面ミラー全体の形状の測定において、全空間波長の計測誤差を最小限に抑えてnm精度で形状計測することに成功しました。(図4参照)

図3.表面形状ナノ計測技術MSI及びRADSI/図4. 組み合わせ形状データ

当社はこの計測技術を用いた自動化装置も大阪大学との共同開発により、EEM装置と同様に内製化し、事業化を加速することができました。
RADSI及びMSI技術に関連する特許は全て大阪大学との共同出願であり、既に数多くの特許を取得しております。
さらに現在、当社では需要の高まっている長尺ミラー用のRADSI及びMSIを独自に開発し、1m長の長尺の非球面形状の反射ミラーの形状の測定においても、計測誤差をナノメートルオーダーで形状計測が可能となりました。

(d)事業の概要

当社が販売するX線ナノ集光ミラーは兵庫県の大型放射光施設「SPring-8」やX線自由電子レーザー施設「SACLA」等、国内外の先端的放射光施設やX線自由電子レーザー施設等で使われ、顧客は主に国内外の国立の研究機関や大学の研究者であり、国の研究予算により、年々積極的に新しい研究が提案され、新しい光学系の構築がなされております。
最近では放射光施設やX線自由電子レーザー施設において、物理、化学、生物などの基礎科学研究分野から、医学利用、医薬品設計、材料評価などの応用分野に加えて産業利用ニーズも高まりをみせ、放射光利用者は年々増大しております。これに伴い、より小さな試料やより高い空間あるいはエネルギー分解能(放射線のエネルギー測定の精度を表す指標。)での分析が求められ、光を扱う技術への高度化の需要は世界レベルで高まっており、当社の“OsakaMirror”の需要が拡大しております。
特に最近、ヨーロッパ、アメリカや中国、韓国、台湾など東アジア、ブラジルなど世界各国の放射光施設では現在主流の第3世代<注11>から第4世代<注12>へのバージョンアップや、新たに第4世代の建設が多数計画されており、従来より高輝度化が進み、測定時間が1/10~1/100程度に短縮されると見込まれており、より高精度なミラーや多機能なミラーが求められ、当社への受注も急増しております。
例えば「SPring-8」では60本近いビームライン(放射光施設には放射光の取り出し口が複数設けられており、そこから取り出した放射光を用いて様々な実験や分析が行われています。この取り出し口から放射光を取り込むラインをビームラインという。)が稼働しており、それぞれのビームラインの川下でのX線ナノ集光ミラーの需要がありますが、ビームラインの川中、川上でも放射光の高調波カットや任意の波長を選択するための分光用の回折格子(グレーティングミラー。放射光施設で生み出される光は、波長の長い赤外線から波長の短いX線まで様々な波長の光が混在しており、その光から軟X線など特定の波長だけを取り出す(分光する)ために用いられる。)など2枚~8枚程度の様々な光学ミラーが使われております(すなわち集光ミラーと合わせて4枚~10枚の光学ミラーが使われている)。その各種ミラーもX線ナノ集光ミラー同様に高精度化が要求されており、当社ではそれら需要にも積極的に応えてまいりました。
当社では常に海外の競合メーカーに対する技術的な地位を保持するために加工・計測に関する製造設備の高度化を図り、また次世代のミラーや様々な自由曲面ミラーの製品化のための研究開発を進めております。
平成29年8月に兵庫県最先端技術研究事業(COEプログラム)に採択され、大阪大学、理化学研究所及び高輝度光科学研究センターと「回折限界下で集光径可変な次世代高精度集光ミラーの製造技術の開発」を実施し、次世代施設向けの集光径可変の次世代高精度集光ミラーDM-150<注13>の商品化に成功し、平成30年4月にまず波面補償用の形状可変ミラーとして販売を開始し、SSRF(中国、上海放射光施設)やAPS(アメリカ、アルゴンヌ国立研究所)から受注いたしました。今後は本ミラーを組み合わせた集光径可変の次世代高精度集光ミラーシステム<注14>として商品展開を図ります。
本X線ナノ集光ミラーはカスタムメイドであり、これを使用する研究者の実験条件により、その都度形状設計が必要となります。当社は長年大阪大学、理化学研究所及び高輝度光科学研究センターとの共同研究を推進し、その研究を通してX線ミラーの設計のノウハウを習得したことにより、顧客である研究者に対して最適なX線ミラーの提案が可能となり、今では海外の競合企業に対して差別化が図れております。
さらに本ナノ加工・計測技術を使って、放射光以外のX線光学素子<注15>用など他の産業分野(半導体、医療及び宇宙分野等)へ製品展開を図るために他企業との共同開発を積極的に進めております。
製造手順は、X線ミラーを受注してから形状設計を実施、承認後、原料となる単結晶シリコンなどのインゴットを調達し、まず外部の協力企業において目標形状に対して機械研磨、研削加工などで形状前加工(近似加工)を実施します。その後当社で目標形状に対してnm精度までナノ加工EEMとナノ計測RADSI及びMSIを繰り返し、製品を完成させます。また必要に応じてX線ミラーの反射表面に金やロジウムなどを均一にコーティングします。
販売体制としては、顧客の大半が国立研究機関や大学などであるため入札になる場合が多く、基本的には直接販売を行っております。また放射光施設のビームラインをまとめてプラント業者に発注するケースもあり、その工事受注業者からの発注になる場合もあります。

〔事業系統図〕

以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

図5.オプティカル事業系統図

なお、平成30年6月期のオプティカル事業の顧客属性別の売上高(売上高比率)については、大学が24,354千円(2.7%)、企業が337,125千円(37.3%)、公的研究機関が542,182千円(60.0%)となっております。

ライフサイエンス・機器開発事業

(a)事業の概要

当事業では、創業当初は創薬スクリーニング<注16>に関連する細胞培養<注17>の自動化から、再生医療に関連する細胞培養まで様々な細胞操作を自動化した各種自動細胞培養装置やiPS細胞<注18>用の各種細胞培養装置の開発・製造・販売を推進してまいりました。
当社の自動細胞培養装置は、培地と呼ばれる細胞増殖に欠かせない栄養分を交換したり、細胞を培養したり、培地を保存したりする様々な機能をオールインワンにまとめた全自動化のシステムであることが特長で、この医療及びバイオ分野では顧客の希望する内容が多様化しており、顧客ごとに独自の操作手順を提案し、カスタムメイドで製造・販売してまいりました。
しかしiPS細胞の出現により高価な自動細胞培養装置に対して広く研究者に使っていただける量産汎用タイプを目指し、iPSアカデミアジャパン株式会社(現株式会社iPSポータル)とiPS細胞専用の自動細胞培養装置の開発に成功し、平成24年秋に京都大学の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞した直後、タイムリーに販売することができました。また長年産業技術総合研究所と浮遊培養(培地内を細胞が浮遊状態で増殖する培養方法)の一種である独自のCell Float技術<注19>を用いた3次元培養<注20>装置をコアにした再生医療向け3次元細胞培養システムの研究開発を推進し、また再生医療や創薬へ製品展開を図っております。
尚、医療及びバイオ分野以外でも企業からの委託開発を受注してOEM製品として供給したり、独自の製品としてX線ナノ集光ミラー用の集光装置等を製造しております。
当事業では、ユーザーへの提案から開発・設計は自社で実施しておりますが、その後の製造に関しては外部の協力会社に委託するファブレス化を進めております。
販売体制としては、直接販売のほか販売チャンネルとして広く販売代理店を活用しております。
また当社の認知度向上のため細胞培養に関わる展示会や学会において積極的に機器紹介やその中で使用されております技術の紹介等を実施し、最近ではiPS関連や再生医療等の研究会や団体へ積極的に参画することにも努めております。

〔事業系統図〕

以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

図6.ライフサイエンス・機器開発事業系統図

なお、平成30年6月期のライフサイエンス・機器開発事業の顧客属性別の売上高(売上高比率)については、大学が3,248千円(3.0%)、企業が97,899千円(92.2%)、公的研究機関が5,080千円(4.8%)となっております。

(b)研究開発

当社は、再生医療分野や創薬スクリーニング分野への展開を図るため、下記のような研究開発に取組んでおり、再生医療や創薬スクリーニング向けの各種細胞培養に関連する製品開発に注力しております。

  • 再生医療向け細胞培養装置の研究開発について
    当社は、長年産業技術総合研究所と研究開発を進めてまいりました3次元培養技術を用い、京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区事業(平成24年度課題解決型医療機器等開発事業、平成26、27年度医工連携事業化推進事業)として、横浜市立大学、産業技術総合研究所、大阪大学とともに「再生医療等に用いるヒト軟骨デバイスの実用化のための3次元細胞培養システムの開発・事業化」に関する共同研究を推進し、平成28年度からは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の産学連携医療イノベーション創出プログラム(ACT-M)に採択され(「臨床試験を目指す3次元細胞培養システムを用いた革新的ヒト弾性軟骨デバイス創出」)、横浜市立大学及び神奈川県立こども医療センターと臨床研究を開始しております。(「第2 事業の状況 5研究開発活動」を参照。)
    本事業では再生医療等に用いる数十mm以上の大きさの弾性軟骨<注21>の大型組織細胞の培養を可能とする3次元細胞培養システムを開発し、製品化の目途を立てており、来年以降の医師主導の治験の準備を進めております。
    さらに弾性軟骨の大型化に伴い、膝・耳・鼻等対象疾患の拡大が期待でき、本研究を通じて再生医療の培養技術を習得し、当社の開発した3次元培養装置単体の販売だけでなくシステム全体のサービスも含めたトータルシステムの販売を目指しております。
  • 創薬スクリーニング用細胞培養装置の研究開発について
    経済産業省の「平成26年度中小企業経営支援等対策費補助金(戦略的基盤技術高度化支援事業)」(平成26~28年度)に採択され、産業技術総合研究所、大阪大学と「iPS細胞等の3次元大量培養技術の開発」の共同研究を推進し、独自の3次元培養技術であるCell Float技術を応用し、創薬スクリーニングの毒性試験等に用いる3次元の肝臓細胞組織等を均質で大量に培養可能な大量培養装置や、この大量の3次元組織細胞を用いた創薬スクリーニング用自動化装置の開発に成功しました。
    当社では本装置を用い、肝臓細胞そのもののスクリーニングに向けた細胞特性の評価や品質安定性の評価が行える体制の構築も進め、これら3次元培養した肝臓細胞をより安価に提供する培養プロセスの開発に努め、製薬会社等が行っております創薬開発プロセスにおける動物を用いたスクリーニング工程との置き換え並びにスクリーニングの信頼性の向上を目標としたシステムの研究開発を行っております。
  • iPS細胞のための培養技術の研究開発について
    このCell Float技術をもとにしたiPS細胞等の未分化維持培養のためのシステムである回転浮遊培養装置「CellPet 3D-iPS」<注22>やスフェロイド<注23>を均一な小さな組織に分散する小片化装置「CellPet FT」<注24>などの製品化に成功しました。さらにiPS細胞等の大量培養のための技術開発も推進し、昨年度から戦略的基盤技術高度化支援事業(平成29~31年度)に採択され、大阪大学医学部及び工学部と「iPS細胞等幹細胞の高効率な継代作業を実現した3次元大量継代培養自動化技術の実用化開発」のための共同研究を進めております。
    また近年オルガノイド(ミニ臓器)<注25>を作り出す技術は急速に進歩しつつありますが、当社の「CellPet FT」を使って、細胞を調変化すると均一な組織の細胞ができ、創薬スクリーニングで有効であると評価されており、様々なオルガノイドに適用するための研究開発を進めております。
  • 細胞培養センター設立について
    平成28年4月から大阪大学吹田キャンパス内の産学共創本部B棟内に、大学や企業と獲得した競争的資金で進める共同研究を推進するために、さらに当社で開発を進める各種バイオ関連機器の上市(新製品を市販すること)に向けた培養評価や培養技術の開発だけでなく、その他大学や企業と様々な培養技術に関する共同研究を積極的に実施可能なオープンイノベーションの場とすることを目的に、細胞培養センターを設けました。現在、複数の企業と培養に関する新製品開発を目指し、共同研究を実施しております。(「第2 事業の状況 5研究開発活動」を参照。)

注1:大型放射光施設「SPring-8」(Super Photon Ring-8 GeV)

「SPring-8」とは、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設です。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のことです。「SPring-8」では、この放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーから産業利用まで幅広い研究が行われています。「SPring-8」の名前はSuper Photon ring-8 GeV(80億電子ボルト)に由来しています。
「SPring-8」は国内外の産学官の研究者等に開かれた共同利用施設であり、平成9年から放射光を大学、公的研究機関や企業等のユーザーに提供しています。課題申請などの手続きを行い、採択されれば、誰でも利用することができます。
「SPring-8」の施設者は理化学研究所であり、「SPring-8」の運転・維持管理、並びに利用促進業務を高輝度光科学研究センターが行っています(図A参照)。

注2:X線自由電子レーザー施設「SACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)」

平成18年3月に策定された第3期科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)において国家基幹技術の一つとして選定されたX線自由電子レーザー施設として、平成18年度から理化学研究所と「SPring-8」を運営する高輝度光科学研究センターが共同で施設の建設・整備を行い、平成23年3月に完成、0.063nm(0.63Å(オングストローム:微小な長さを表すのに用いられる単位。1Å=0.1nm))の世界最短波長のX線レーザー生成に成功した施設であり、平成24年3月7日より供用運転を開始しています(図A参照)。

図A 大型放射光施設「SPring-8」、X線自由電子レーザー施設「SACLA」

注3:ゾーンプレート

物質透過率の高いX線では、物質毎の屈折率が変わらないため、レンズは役に立ちません。そこで、ゾーンプレートと呼ばれる光の通るところと通らないところが交互に並ぶ同心円状のものを用い、ピンホールのように光の回折と干渉を利用した集光方法があります。

注4:光学系

光学系とは、光の反射や屈折などの性質を利用して物体の像をつくったり、集光したりする部品や装置の総称のことを示すものです。部品としてはミラーやレンズが当たります。

注5:集光強度、集光径

集光強度とは、レンズ等を利用して光を1点に集めた場所(集光点)の明るさのことを示すものです。また、先に述べました集光点が物理的に理想的な集光をしたとしても、極微小ながらある程度の大きさを有しており、その大きさのことを集光径といいます。ここでは、集光強度を高くすることと集光径を小さくすることは同じ意味となります。

注6:KB型光学ミラー

2枚の非球面ミラーを特殊な配置をすることによって、2次元的な結像を可能とするミラー。開発者Kirkpatrick(カークパトリック)とBaez(バエズ)の二人の頭文字をとって、KB(Kirkpatrick-Baez)型配置と呼れています。

注7:ナノメートルオーダー

nmの単位で表される長さや範囲のことを示します。

注8:回折限界

直進している光であっても小さい穴を通過した後ではそのまま直進するのではなく放射的に広がる性質を持っており、この現象を回折といいます。この性質があるために物理的に理想とするレンズを用いて光を1点に集めようとしても限界があることが知られており、このことを回折限界といいます。

注9:マイケルソン型位相シフト干渉計

アメリカの物理学者マイケルソンによって考案された二光束干渉計で光速度の測定に用いられます。

注10:フィゾー型干渉計

レーザーを光源とする干渉計で、簡単な構成で高精度の平面測定、球面測定が行えるため、最も普及している干渉計です。

注11:第3世代放射光施設

電磁石のないフリーな直線部を多数有する蓄積リングにアンジュレータを設置してX線領域の高輝度の放射光を発生させる施設(例:SPring-8)です。

注12:第4世代放射光施設

MBA(マルチベンドアクロマット)ラティス(蓄積リングを構成する磁石群の基本構造の中に電子ビームを曲げる偏向電磁石の数を従来よりも多く設置したもの)の採用による、第3世代より低エミッタンスで100倍~1000倍程度、高輝度な放射光を発生させる放射光施設(例:スウェーデンMAX IV、中国SSRF、ブラジルSIRIUS等、またアップグレードの実施及び計画中としは日本SPring-8-IIのほか、欧州ESRF-II、米国APS-II等がある)です。

注13:次世代高精度集光ミラーDM-150

DM-150は写真Aにあるように150mm長さの反射表面の両側に多数の電極を有する圧電素子を配置しており、圧電素子が貼り付けられたミラー素子は、下記の図Bのように各圧電素子に電圧Vを印加することでモーメントMが発生し変形させることができます。このミラーを複数枚用いて多段で制御することで、X線ビームを任意の集光径に変化させることができ、大きなサンプルから、小さなサンプルまで光量を下げることなく、分析および測定ができるようになります。なお、DM-150においては、写真Aに示すようにX線反射面側に18チャネルの電極を有しているため、反射表面の形状を自在に変形させることが可能です。

写真A 形状可変ミラー本体DM-150 図B 形状可変ミラーの原理図

注14:次世代高精度集光ミラーシステム

写真Bは次世代高精度集光ミラーDM-150をKB光学配置した次世代高精度集光ミラーで、縦と横方向とそれぞれ別々に集光径可変で、焦点位置を変えることなく回折限界下で集光径を自在に変化させることができます。これにより1回のビームタイムで1つの試料に対して複数の分析手法による複合分析が可能となり、次世代ミラーの1つとして注目されております。

写真B 次世代高精度集光ミラーシステム

注15:X線光学素子

光の反射や屈折を起こさせるための部品のことを指します。例えば、ミラーは光を反射させるため、レンズは光を集めたり広げたりするため、プリズムは可視光を7つの色の光に分けるため、偏向フィルターは光の波の向きがそろっているものだけを通過させるために使用されています。

注16:創薬スクリーニング

新たな医薬品が製品となるまでの一連の過程を創薬と呼び、種々のアッセイ(評価)系を用いて化合物を評価し、その多くの化合物群(ライブラリー)の中から新規医薬品として有効な化合物を選択する作業のことをいいます。

注17:細胞培養

多細胞生物から細胞を分離し、体外で増殖、維持することで、生体外で培養されている細胞のことを培養細胞と呼び、本事業においてはこの培養細胞を培養することを細胞培養といいます。

注18:iPS細胞

人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)の略。京都大学山中教授が作製に成功し、皮膚細胞に特定の4つの遺伝子を導入することにより、ES細胞(胚性幹細胞)のように様々な細胞に分化・増殖できる万能細胞のことをいいます。特定の細胞や臓器に分化させることによって再生医療の可能性を拡大し、新たな遺伝子治療や薬の開発プロセスでの応用など、医学の臨床及び基礎研究の両面において、今後大きな役割を担っていくものと期待されています。

注19:Cell Float技術

Cell Float(図C参照)は、ガス交換膜を裏側に備えた円形のベッセルが、回転することで細胞に与える重力を打ち消すような培養液の流れにより、細胞組織はベッセルの底に沈むことなく、培養液中にふわふわと浮いた状態で徐々に3次元集合体を形成する培養技術で、RWV(Rotating Wall Vessel)回転培養法の一種です。

図C Cell Float(CellPet 3D)

注20:3次元培養

細胞培養は通常、ディッシュやフラスコを用いて、平面空間上に細胞を接着させ増殖、分化させますが、平面空間上で培養した細胞は2次元シート状組織しか形成せず、培養の目的によっては、得られる細胞組織が十分な機能を持たないことがあります。再生医療のように、3次元的に損傷した組織に移植する組織を生体外で培養する場合、3次元培養による3次元組織が重要であると言われています。

注21:弾性軟骨

軟骨組織の一種で、外耳道軟骨、耳介軟骨、喉頭蓋軟骨、鼻軟骨などがこれに属します。軟骨基質は弾性線維で構成されているため弾力を持っています。新鮮なものは黄色く見えるため黄色弾性軟骨とも呼ばれています。

注22:CellPet 3D-iPS

主にiPS細胞を立体的(3次元的)な細胞集合体として培養するための、当社が開発した独自の回転浮遊培養装置となります。この装置は培養技術としてCell Float技術(注19を参照)を適用し、また本装置に適用する培養ベッセルはiPS細胞の培養前後の処理作業を考慮し、注射器(シリンジ)型を採用しています(図D参照)。

図D 回転浮遊培養装置(CellPet 3D-iPS)

注23:スフェロイド

多細胞性球状体、多数の細胞が3次元的に集合した状態で、組織よりはるかに少ない細胞量(数十から数千個程度)の塊のことをいいます。たとえば近年、細胞を「クスリ」として投与することによる治療への期待が高まっており、生体内で細胞は、周りの細胞や細胞外基質と密接な相互作用をしていることから、細胞を三次元培養することで得られる細胞塊であるスフェロイドは、細胞の機能を最大限に引き出すことのできる投与方法として注目されています。

注24:CellPet FT

培養したスフェロイド(注23を参照)または組織状の細胞に対して更なる増殖を促すため、また冷凍保存するために必要なサイズに小片化する必要があり、通常の方法である試薬や酵素による作用でなく物理的なせん断作用によって小片化するための独自の細胞小片化装置となります。適用可能な細胞種は多く、iPS細胞だけでなくその他の幹細胞、または癌細胞、組織細胞などを小片化することができます(図E参照)。

図E 細胞小片化装置(CellPet FT)

注25:オルガノイド(organoid)

3次元的に試験管内(in vitro)でつくられた臓器のこといいます。オルガノイドは、拡大しても本物そっくりの解剖学的構造を示し、実際の臓器よりも小型で単純です。これらは、組織の細胞、ES細胞またはiPS細胞から、自己複製能力および分化能力によって、3次元的な培養で自己組織化により形成され、基礎医学および医学・創薬応用に有用であるとされています。
例えば肝臓オルガノイドは薬物スクリーニングで使用するための肝臓疾患モデリングおよび、正常細胞や疾患細胞生成することが可能となります。
オルガノイドをつくり出す技術は、2010年代初めから急速に進歩しており、ザ・サイエンティスト(英語版)誌はオルガノイドを「2013年の最大の科学的進歩の1つ」に選びました。