オプティカル事業Optical
ジェイテックコーポレーションの高精度X線ミラー
当社は、大阪大学で開発されたEEM®加工法の実用化に成功し、ナノメートル精度の表面形状加工の産業利用を実現しました。当社が製作・販売する高精度X線ミラーは、理想とするミラー表面の形状に対しナノメートル単位の精度を実現し、これまでに無い極めて優れた放射光X線の集光特性を有します。
当社の高精度X線ミラーは医薬学・エレクトロニクス・マテリアル・食品・美容などの多岐に渡る分野での研究促進に貢献し、世界最小の集光径を実現するミラーとして、世界中の研究者から高い評価を得ております。
下のグラフは実際に当社で製作した長さ1メートルの高精度X線ミラーの表面形状と、形状誤差を表したグラフです。このミラーでは、深さ50-60㎛の楕円形状(青色の線)に対して、形状誤差(赤色の線、設計形状からの誤差)が±1ナノメートルと、非常に高い精度を実現しています。これを例えるなら、東京~大阪間500kmに高低差約25メートルの凹型の鉄道を敷設した場合に、その段差(誤差)がわずか±0.5ミリメートルに収まるレベルに相当します。また、平面だけでなく楕円面や球面、回転体など自由な曲面を製作できるのも当社の強みです。
放射光とX線について
放射光とは、直進する高エネルギーの電子に対して、偏向磁石により軌道を曲げた時に発生する接線方向の人工的な電磁波(光)です。放射光には高輝度(極めて明るい)・高い指向性(細く絞られ拡がりにくい)などの優れた特徴があり、電子のエネルギーが高いほどX線などの短い波長の光を含むようになります。


放射光を利用した研究成果
近年の放射光利用による研究成果として、微小タンパク質の構造解析や、小惑星イトカワ微粒子の3次元構造解析、ナノ結晶複合薄膜の規則成長の構造決定などの基礎研究から応用研究だけでなく、燃料電池の白金触媒の化学状態の可視化、高性能タイヤの新材料開発技術など様々な産業分野にも広く利用されています。
生命科学
- 細胞内を3DイメージングできるX線顕微鏡開発
- 光合成の中核をなすタンパク質複合体の構造解析
物質科学/産業
- ニッケル水素電池の高容量化
- ヘアケア用品開発へ向けた髪の毛の内部構造解析
- 三次元計測の新手法が低燃費タイヤの開発に貢献
環境科学/地球科学
- 地球内部の環境を再現
(外核が二層に別れて対流している可能性を示唆 - はやぶさ持ち帰りの小惑星イトカワの微粒子解析
考古学科学/鑑定
- 犯罪捜査の分析・鑑定
- 蛍光X線分析による三角縁神獣鏡の原材料調査
- 木製古面から剥離した破片をもとに原材料を特定
放射光施設とは
放射光施設は「巨大な顕微鏡」に例えられます。原子や分子の世界を観察するには、物質内部のミクロな世界を照らし出す強い光(X線)が必要です。蓄積リング内の大型加速器と特殊な偏向電磁石により、よく絞られた強いX線を発生させることで、微細な領域を十分明るく照らし出せる光が実現可能となります。
放射光施設は電子銃から放出した電子を光速近くまで加速し、偏向電磁石や挿入光源を用いて得られる放射光を物質に当てることで、微細な構造を調べることができる研究施設です。発生した放射光は蓄積リングから放射状に設置されたビームラインに導かれ、様々な研究・分析に利用されます。


当社の高精度X線ミラーは、ビームラインにおいて、集光や分光、結像などを目的に使用されます。使用例として、試験サンプルの手前に高精度のKBミラー(Kirkpatric-Baezミラー)を設置し、X線をナノオーダーまで集光することで、より高い分解能を得ることができます。


大型放射光施設 SPring-8
SPring-8は世界最高性能の放射光を生み出すことができる、全周1.5km、ビームライン数62本(うち56本が稼働中)の大型放射光施設です。SPring-8はアメリカのAPS(Advanced Photon Source)、欧州のESRF(European Synchrotron Radiation Facility)とならぶ世界最高レベルの放射光施設として基礎研究から産業利用まで優れた成果を挙げています。当社はSPring-8と、隣接するX線自由電子レーザー施設SACLAに多数のミラーを納入してきました。
SPring-8(外部サイト)世界の放射光施設
現在、日本・アジア・アメリカ・欧州を中心に世界中で40以上の放射光施設が稼働しています。当社の高精度X線ミラーは、回折限界の集光を実現するミラーとして、これらの先端的な放射光施設およびX線自由電子レーザー施設で利用され、その製作精度は高い評価を得ています。
| 所在地 | 施設名 |
|---|---|
| 兵庫県 | SPring-8 |
| 兵庫県 | SACLA** |
| 兵庫県 | NewSUBARU |
| 茨城県 | Photon Factory Advanced Ring(PF) |
| 佐賀県 | 九州シンクロトロン研究センター Saga Light Source |
| 愛知県 | UVSOR |
| 滋賀県 | 立命館大学SRセンター |
| 宮城県 | NanoTerasu |
※※はX線自由電子レーザー施設
| 国 | 施設名 |
|---|---|
| アメリカ | Advanced Light Source (ALS), Lawrence Berkeley National Laboratory |
| アメリカ | Advanced Photon Source (APS), Argonne National Laboratory |
| アメリカ | National Synchrotron Light Source II (NSLS-II), Brookhaven National Laboratory |
| アメリカ | Linac Coherent Light Source (LCLS)**, Stanford University |
| アメリカ | Laurence Berkeley National Laboratory(LBNL) |
| アメリカ | Stanford Linear Accelerator Center(SLAC) |
| カナダ | Canadian Light Source (CLS) |
| オーストラリア | Australian Synchrotron(AS) |
| ブラジル | SIRIUS |
| フランス | European Synchrotron Radiation Facility (ESRF) |
| フランス | SOLEIL Synchrotron(SOLEIL) |
| イギリス | Diamond Light Source (DLS) |
| ドイツ | Deutsches Elektronen- Synchrotron (PETRA III, DESY) |
| ドイツ | Berlin Electron Storage Ring Society for Synchrotron Radiation(BESSY II) |
| ドイツ | European XFEL** |
| スイス | Swiss Light Source(SLS) |
| スイス | SwissFEL** |
| スウェーデン | MAX IV |
| スペイン | ALBA SYNCHROTRON LIGHT SOURCE(ALBA) |
| 中国 | Shanghai Synchrotron Radiation Facility(SSRF) |
| 中国 | SHINE** |
| 中国 | Beijing Synchrotron Radiation Facility(BSRF) |
| 中国 | High Energy Photon Source(HEPS) |
| 中国 | National Synchrotron Radiation Laboratory (NSRL) |
| 中国 | Hefei Advanced Light Facility(HALF) |
| 中国 | Institute of Advanced Light Source Facilities, Shenzhen**(IASF) |
| 台湾 | Taiwan Photon Source(TPS) |
| 韓国 | Pohang Light Source (PLS-II) |
| 韓国 | PAL-XFEL** |
| インド | Indus I&II |
※※はX線自由電子レーザー施設
